戸井 十月  Jugatsu Toi

作家/冒険家

東京、新宿生まれ
作家・世界5大陸をバイクで駆けぬける冒険家
武蔵野美術大学商業デザイン科中退 
以後、ルポライター、小説家として活躍。

che.jpg戸井さん著書 チェ・ゲバラの遥かな旅 (集英社文庫)

Message to MVP (2006年)

一週間前、砂嵐のような男たちがまたやって来た。モグビレッジの福定と日野。出会って五年になるが、いつ会っても砂と埃の臭いがする。時々東京にやって来ては、ものを食らい、酒を呑み、アフガンの男たちとの友情を熱く語って砂嵐のように吹き抜けてゆく。最近には珍しい、筋の通った男たちである。連中の純情と不屈の精神に脱帽し、そういう男たちがいることに私は勇気づけられる。この国は、まだ大丈夫かもしれないと・・・。

toi_book_.jpgゲバラ最期の時(戸井十月)



 私たちは今、道理も知性もへったくれもない世界に生きている。世界で最も大量の破壊兵器を持つ国が「平和」を謳い、世界で最も大量の人間(自国の兵士も含めて)を殺している国が「民主主義」を押しつける、そういうデタラメな世界だ。我が国と言えば、そんな大国に媚びへつらい、「どこが戦闘地域か非戦闘地域かなんて、私に分かるわけないでしょう」の迷言を吐いた、恐らくは歴史上に名を残すであろう阿呆をリーダーに頂き、輪をかけた阿呆が次の席に就こうとしている。更に悍(おぞま)しいことには、そんな阿呆を、特に若い者たちが支持しているという。牙を抜かれたどころか、脳味噌もない状態だ。
 世も末である。がしかし、そのことを嘆いていても始まらない。世の中、阿呆の方が多数派なのは昨日今日に始まったことではないのだ。
 こんな御時世だからこそ、モグビレッジの男たちに勇気づけられる。奴らの、持続する志に希望を見つける。
 大きなことはできないかもしれない。がしかし、国境を越えた人と人との繋がりにしか未来がないのは確かだ。デタラメな世界をひっくり返す突破口はそこにしかない。人間を愛し、ただその一点にこだわり続けて我が道を行く男たちに幸あれ。砂と埃の臭いのする男たちが、実はその腹の底に豊かな水を湛えていることを私は知っている。持続は力なりという言葉は、西から時々吹いてくる、砂嵐のような男たちのためにある。行けるところまで行こうぜ、兄弟。